中川瞬(以下S)
はい、では宜しくお願いします。
忘れないうちにまず、マナミさんに先日帰省した際の諏訪土産渡しておきます。
マナミ(以下M)
ありがとうございます。
S
これは横笛ってとこのお酒で、親父と一緒に酒蔵いくつか回ってお土産決めようとしてたんですけど、最初に入った横笛の人が結構試飲で注いでくれたんで、もうベロベロで。(笑)とりあえず酒蔵限定のやつにしました。
M
横笛、初めて聞きましたが調べてみたら趣のある良い酒蔵な感じがしました。同じ通りに複数の酒蔵が密集しているみたいなので今度行ってみたいです。
S
是非時間が出来たら皆で行きましょう。さて、本題に入る前にビールでも飲みますか。
一同
はい。(笑)
デリ(以下D)
今日こうやって話した事を記事にするにあたって、何か名称とか付けるんですか?
S
いきなり名称?さすがデリ。形から入るタイプ。(笑)実はもう何か思いついてるんでしょ?
D
いや、特に無いです。ただ、あるのかなと思って。
S
そういえば昔ルートマガジンやってた時に対談やってた時はTALK TO NEWAGEって名前にしてたっけ。(笑)
※雑誌√で始まった対談企画。まだCHIRISTIAN DADAを始める前の森川氏と。
D
今日は来期のコレクションについて話すと聞いてますが、そもそも何故そういう話になったんですか?
S
マナミさんから、もうすぐ来期(No29)の立ち上がりだからその前にコレクションの説明とかをして欲しいって言われて、文章にしてみたらそれがもの凄く長くなっちゃったの。で、それをブログで書くにも長過ぎて分割しないといけなくなって、それなら新しいコンテンツ作ってそこで掲載しましょうって話になったの。
D
そういう経緯だったんですね。
S
そう。で、もともと出版物もやりたかったから、出版物にする前に試験的にウェブで毎月発行出来るものをやろうかと。ルートのような外部の人達を巻き込みながらやるのもやりたいから時間に余裕が出たらそっちも取り掛かりたいなと思って。
D
なるほど。早速ですが、コレクションの事で質問あるんですけど良いですか?
S
何でしょう?
D
今回のコレクションで軸にあるテイストって何ですか?
S
軸にあるテイスト?(笑)
D
いや、いつもボンテージパンツとか毎シーズンリリースされてますけど、今回は多かったりするじゃないですか。
S
そうかな。ボンテージというよりギミックが多いアイテムがいつもより多かったよね。
村中僚介(以下R)
そうですね。ファスナーとかポケットが付いてる服が多かったですね。
※No29コレクションアイテム画像より抜粋。
S
パターン大変だった?
R
はい、大変でしたね。(笑)
S
だよね。
R
パターンもですが、縫製してくれた工場さんもかなり大変だったと思います。
S
ていうか、だいぶ録音されてる事を意識したコメントだね。(笑)
D
はい、彼はだいぶ意識してますね。
S
そんな文章に興しやすい言葉を選ばなくても良いよ。(笑)
S
話を戻すと、いつもボンテージパンツやるのはそもそも自分がそこからファッション入ったっていうのが大きいから。もはやアイテム自体が自分のルーツ。
で、なんでボンテージパンツが好きになったのかっていうと、シルエットが変化するものとか、なんだか色んなパーツが付いてるものが好きなんだよね。
昔、F1とか見てたし、ナイトライダーとかも好きだった。そういう乗り物系と、あとはガンダムみたいなメカ系。
沢山付いてるボタンとかレバーとかそういうのが昔から好きだったんだよね。ここ押したらどうなるんだろう的な。
だから、ボンテージパンツもシルエットが変化するのが堪らなかった。(笑)
あとバックルとテープの無駄に付いてる感が好きだったんだよね。そういう発想からきてるから、ウチの服の場合は単に多機能とかじゃなくて、無駄な機能とかも多い。実際沢山ポケットを付けても毎回使うポケットは限られてくると思うんだよね。でも、デザインとして見たらその無駄に沢山付いてるのが単純に格好良いと思ってる。
※90年代のF1の中でもマクラーレンは特別。他のモータースポーツには興味無し。
M
お客さんもその辺は理解してくれてる方が多い気がします。利便性ではなく、デザインを買ってくれてるんだなと。
S
あとはスタイルもウチは大事ですね。これからはギミックがあるものをちゃんとスタイルまで提案してやっていきたいなと。今回のルックブックはそう言う意味では満足の出来です。
D
前回(NO28)のコレクションはどういう作り方をしたんですか?
S
YURUFUCKの時ね。(笑)あれはデザインに入る前に提示したいメッセージを決めてたからデザインは後から取り掛かったんだよね。その前のショーやったシーズン(NO27)も同じ感じ。伝えたい事が先にあるとそれに合わせて服を作るからそれはそれで楽しかったりする。
でも、今はやっぱり自分の着たいものやスタイルの提案が大事な時代なのかなとは思ってるかな。
※No28コレクションでは、ゆる〜く生きてることやフワフワしている事を自称している奴が結局一番前のめりというメッセージをコレクションで表したシーズン。少女のイラストに前衛的なパンクモチーフの洋服。カラーもフワッとしたパステルカラーを多く採用した。
R
ちなみに変化するものが好きと言われてる中に、シルエット的なもの以外の変化も入りますか?例えば経年変化とか。
S
いや、単に形が変わることを挿してる感じ。経年変化とかはショップコートやデニムパンツやレザーライダース等の一部のアイテムにしか当てはまらないからそこはあまり意識してないかな。というより、年々気にしなくなってきた。
数シーズン前はオーセンティックな物に影響を受けてそれを自分の解釈で作ったりしてたけど、今はバナルというブランドが別にやらないでも良いのかなって。今はね。
あと、例えばGジャンとかね、3枚持ってるの。でも、普段着てないでしょ?だから月1回をローテーションしたとしても1枚3ヶ月に1回しか着ないの。だから経年変化しないのよ。(笑)
※スタッフの仕事着として使っているショップコート。リネンとデニムの切替えで経年変化も楽しめる一枚。左から中川私物、益川私物、村中私物。
D
確かにあまり同じ服着てるイメージが無いです。
M
アイさん苦労しそうですね。服の片付け大変って言ってましたよ。(笑)
S
そうですよね。だから最近はあまり買わないように心掛けてますが、買っても良い?と聞くと絶対にOKが出るので甘えて買ってしまいます。
M
優しさですね。(笑)
D
今日はデリエイトのパンツですね。これもあまり穿いてるの見てない気がします。
S
いや、これは相当穿いてる。これは本当便利。
D
ありがとうございます。
R
いやいや、おかしいでしょ。(笑)
S
確かに。(笑)デリエイトって名前にした事でデリがデザイナー説が浮上してる。というか、本人がまんざらでもないって態度をとるからそれがいけないのよ。この前も展示会で、デリエイトのデリってもしかして!って聞かれてて、まあ想像にお任せしますって答えてたんだよね。
R
それはヤバい。(笑)
S
否定しないんだっていうね。
M
お客さんにも聞かれた事ありますよ。
D
マジですか?
M
だからバッサリ否定しておきました。(笑)
S
アトリエの皆で作ってるからね。一人でも作りたくないってなったら作らないし、自分たちでわからない事があれば専門分野の人にアドバイスもらったり。
M
でもデリさんのデリエイト愛はひしひしと伝わってきますよ。
D
そうですね。はい。
S
でも確かにデリエイトが存在するからバナルは自分のやりたいようにやれるようになったかも。さっき話してた経年変化するものというか、定番的なアイテムはそっちでやれば良いかなって。
M
展示会でも今回は会心の出来だとおっしゃってましたよね。お客様にもそこはしっかり伝えましたよ。
S
ありがとうございます。(笑)
M
毎シーズン、1アイテムごとの説明って聞かないじゃないですか。テーマに関しても展示会で見て感じ取った事をお客さんに話しているのですが、それが正解なのか不正解なのかもわからなかったので、今回はこの場で一回ちゃんと聞いておきたいなと思ったんですよね。
前に働いてたアパレルメーカーでは説明会を開いて、一型ごとに説明があったので。ADDに入ってからは自分の説明が全てなんだなという責任感がありますね。
S
確かにウチはコレクション後のミーティングとかしないですもんね。でも、僕はあまり説明し過ぎるのは良くないかなと思っていて、洋服やルックを見てそれぞれがメッセージや意図を読み取ってくれれば良いんじゃないかなと思ってます。だから今回もある程度説明したら、後はスタッフそれぞれの解釈でお客さんに説明してくれれば良いのかなと。
我々は言葉で表現出来ないものを洋服にしているので僕自身の回答が正解とも言えないような気がしてます。ウチは直営店ベースの展開をしているので、お客さんに僕たちの考えが伝わりやすいのが良いところですね。
D
マニュアルとか無いですもんね。
S
そう。だから今店頭からのリクエストでTシャツのアーカイブをセレクトしたり、スポットアイテム用意したりしてるけど、このスピード感は店頭主導のウチならではなのかなと。毎月デリバリーがあるのも大手メーカーを省くと稀だから、今月末から新シーズンが立ち上がるというこのスピード感は大事にしたいよね。
D
そうですよね。大手メゾンがショーの翌日から販売するとかしないとか最近騒いでますが、ウチはそういう部分での取り掛かりは早かったですよね。
M
今月は一点物のコレクションピースの他にSSAWラインで新しく出るロンTやキャップなどがありますよね。キャップは色展開が多いですが、ピンクはもはや中川さんカラーだとお客さんとも話したりしてますよ。(笑)
※編集作業してたら偶然横にいたアイが被ってました。
S
確かにピンクだけはフライングでもう使ってますね。他の色も気に入っているのですが、基本的には洋服にも使用しているテキスタイルを選びました。
このキャップ、裏企画でbanal chic bizarre、NON TOKYO、DeLIATe、KastufumiTakihanaで同じ形で作ったんですよ。それぞれ自由に素材とか決めてもらって。DeLIATeは上質なウールを使って、KatsufumiTakihanaはワッペンを付けました。このKatsufumiTakihanaに関しては今期からいきなり始めたのもあり、説明不十分なのでまた次回にでも本人を交えて雑談しようと思います。
M
マスクについても一度展示会で話されていた事をもう一度聞きたかったのですが。
S
マスクカバーは、展示会のちょっと前にお仕事の関係で某バンドのライブに伺ったのですが、その時お客さんが皆真っ黒い服にマスクとかしてるんですよ。ドンキとかに売ってる黒いやつです。もうマスク込みでファッションの一部になっているのを目の当たりにした時に、そういえばマスク作ってるブランドって少なくない?って思ったんです。で、色々リサーチした時に黒いマスクはかなり品薄で入手できない時もあるというのを知ったんですよね。実際ドンキ行ったら売り切れてましたし。それならマスクカバーを作って白いマスクに付ければ黒くなるのはどうだろう?と思って提案してみました。ショーやルックでもマスクやヘルメットなどは頻繁に使用するアイデアなのですが、今回のテーマとマスクカバーもバッチリ合いました。
マスクとしての機能性は損なわれるのでファッションアクセサリーとして取り入れてもらえれば。
※過去のマスクやヘルメットを使用したコレクション。
R
需要があるなら機能面は改良していきたいですね。
S
そうだね。ヒールブーツも半信半疑で作ってみたところから始まって、今でも改良し続けてるもんね。今月はヒールブーツの新色が2色出るけど、初期のと比べると履き心地も材質も凄くレベルが上がってる。
M
お客さんの中にはずっとリピートしてくれている方が沢山いらっしゃって、前回生産時と今回のだと微妙にアッパーのラインやヒールの太さが違うみたいで、色々ご意見を頂きますよ。
S
そういう意見はちゃんと参考にしたいですよね。自分たちよりもお客さんの方が詳しい事も多々ありますし。痒いところに手が届くクリエイションを目指したいですね。
D
今回のADD MAGの意見も色々聞きたいですよね。
S
そうだね。あまりにつまらないようならすぐに辞めよう。(笑)
よし、僚介の腹が鳴ったからもうこの辺にしますか。
R
そうですね。(笑)